2004年12月06日

今週の1枚:「Diesel and Dust」

B0000026DJDiesel and Dust
Midnight Oil
Columbia 1990-10-25

by G-Tools


 2002年に惜しまれながらも解散したオーストラリアのロックバンド、MIDNIGHT OILが87年に発表した代表作。80年代をリアルタイムで過ごした洋楽ファンならこのアルバムからシングルカットされてヒットした“Beds Are Burning”は知っているかもしれませんが、多くの人は一発屋という認識しかないでしょうし、日本では全くと言っていいほど人気がないので、私の年代以下の人でこのバンドを知っている人はほとんどいないでしょう。でも、オーストラリアでは解散した今でも高い人気を誇る国民的人気バンドですし、私の最も好きなバンドの一つです。

 オーストラリア出身らしい泥臭くてストレートなロックサウンドに、環境保護や中東問題、先住民問題などに対する社会的なメッセージを込めた歌詞、長身&スキンヘッドのピーター・ギャレットのクセのあるボーカルが特徴で、世界的に売れ出した80年代中頃はよくU2と比較されていました。いわゆるキャッチーな音楽ではないし、リズム隊とギターの絡み方はかなり独特なのですが、何故か自然と耳に馴染む曲が多いです。ピーター・ギャレットのボーカルは格別上手いってわけではないのですが、不思議と説得力があり、歌詞の持つ意味を考えながら聴くと彼の歌声には心を動かされます。

 まず、このアルバムを語る上で避けて通れないのは冒頭を飾る“Beds Are Burning”(歌詞)。日本語でググってみると「この曲は環境保護の歌です」と書いているサイトがあったり、Amazonのカスタマレビューでは「どうにでも取れる歌詞」なんてことまで書いている人がいますが、こーいうのを見るたびに日本ではMIDNIGHT OILだけではなくオーストラリアという国すらもちゃんと理解されてないんだなぁと思いますね。確かに環境保護的な意味合いもありますけど、この曲が訴えているのはそれがメインではありません。少しでもオーストラリアの現代史を知っている人なら、
A fact's a fact
It belongs to them
Let's give it back
 という歌詞の一節を見ればこの曲がNative Title(参考リンク:その1その2) について歌っていることはすぐに分かると思うんですけどねぇ・・・。シドニーオリンピックの閉会式で演奏したMIDNIGHT OILのメンバーが“sorry”と書かれたTシャツを着ていた意味、彼らが“Beds Are Burning”を演奏した後にステージに出てきたのがYOUTH YINDIだった意味。テレビで閉会式を見ていた多くの日本人は何も分からなかったと思いますし、それを解説しなかった日本のテレビ局にも問題はあると思いますが、この曲は単なる一発屋のヒット曲以上の意味を持つ曲ですし、音楽的にも歌詞のメッセージ性と楽曲の完成度という点ではU2の“Sunday Bloody Sunday”に匹敵する名曲だと私は勝手に思っています。

 でも、実は私が一番好きな曲はこの曲ではなくて、このアルバムの6曲目に入っている“The Dead Heart”なんですよ(Amazonの曲名表記は“Dead Heart”ですが、これは誤りで“The”が付くのが正解です)。
We carry in our hearts the true country
And that cannot be stolen
We follow in the steps of our ancestry
And that cannot be broken
 というサビの歌詞でピンと来ると思いますが(歌詞)、“Beds Are Burning”とは反対にこの曲はアボリジニの側の思いを歌った曲です。このサビの“stolen”という単語は去年日本でも公開された『裸足の1500マイル』という映画で少しは日本でも知られるようになった“Stolen Generation (盗まれた世代)”を念頭に置いた歌詞だと思います。この曲のイントロや間奏で何度も繰り返される“トゥルトゥルトゥルル〜”というフレーズとサビでのピーター・ギャレットの歌唱を聴く度に、哀愁と悲しみが入り交じった何とも言えない気分になって胸が締め付けられます。世界で一番好きな曲かもしれません。

 そんなわけで、音楽というよりも歌詞の話ばかりになってしまいましたが、BAD RELIGIONやGREEN DAYを取り上げた時にも書いたように、こういった音楽というのはその歌詞の持つメッセージを含めて一つの音楽だと思いますし、もし誰かこのバンドに興味を持った人がネットで検索した時に、「環境保護の歌がヒットした一発屋」という日本での一般的な理解以上のことを知って欲しいと思ってこのエントリを書きました。私はこのバンドの音楽も歌詞も好きですし、不器用ながらも音楽や社会と誠実に向かい合ってきた彼らの魅力が最大限に発揮されたのがこのアルバムだと思っています。

 ちなみに、このアルバムの次にリリースされた「Blue Sky Mining」もいい曲がたくさん入っているのでオススメです。
posted by SB at 21:53| Comment(3) | TrackBack(2) | レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そう言えば、前に紹介してたかっちょいいバンドですね。聴きたいなー。<br />
現在、金無いので市民図書館でCDを借りてます。まあまあ、あるんですが、並べ方が乱雑で探そうとして、探せる場所じゃないですね。<br />
今週は適当に、SKID ROW、ROD STEWART、少年ナイフを借りました。<br />
もっとこのサイトを勉強して、いろんなアーティストを勉強しなければ…って借りても結構聴く暇なかったりするんですよね(^^;)
Posted by ブロー at 2004年12月13日 05:05
少年ナイフとSTEWARTって組み合わせは凄いですねぇ・・・。<br />
私の好みはメチャクチャなので、私のオススメに従って聴いていたらワケの分からない音楽ばかり聴くことになりますよ(笑<br />
私も忙しくてヒマがないので封すら開けていないCDやらDVDが部屋中に散乱しています・・・。<br />
<br />
MIDNIGHT OILはまた後日メールで
Posted by ソニー豆 at 2004年12月15日 06:53
Heart Of Darkness: 今週の1枚:「Diesel and Dust」
Posted by gucci 財布 2013 at 2013年07月21日 03:07
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Tracked: 2008-02-18 22:11

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Excerpt: ただいまオーストラリアのバンドMidnight Oilを聴きながら記事を書いてます。しかもテープ(!)高校生の時にどうしても欲しくてオーストラリアの友人に送ってもらったのですが音楽もいいけどメッセージ..
Weblog: ダイダラボッチのやってみよっ!
Tracked: 2008-02-29 22:00

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