「Lousy With Desire」 / Walter Tragert いきなりですが、今年の私的ベストアルバムが決まっちゃいました。このウォルター・トラガートの2ndアルバムです。彼はオースティンで活動するSSWで、DWHQの招きで現在スクラッッピー・ジャド・ニューコムと来日中です。最近まで彼の名前すら知らなかった私は、「ライブの予習のためにとりあえず買っておくか」という半ば義務的な気持ちで
Goateeの通販で購入したのですが、これがホントに素晴らしい出来で、ここ1週間ほどは取り憑かれたようにこのアルバムを何度も繰り返して聴いています。
Goateeの松本さんのペンによるライナーでも書かれていますが、これがホントにオースティンのSSWのアルバムかと思うほどスタイリッシュで、カントリー的な泥臭さやアメリカ的な乾きとは無縁のどこか艶と憂いのある音楽です。ラジオでガンガンかかっていてもおかしくないくらい良い意味でのメジャー感があって、とても次のアルバムのスポンサー探しに苦労している人のアルバムとは思えません。
音楽的には、ソウルミュージックやブルーアイドソウル、英国パブロックからの影響を受けていると紹介しているところが多いですけど、モロにソウル風なのは1曲目の“Singing On The Radio”だけですし、ブルーアイドソウル的なのはボーカルや曲の味付けだけで、楽曲に限って言えば基本は実にストレートでアメリカンなロックだと思いますね(1stはもう少し影響が色濃く出ていますが)。音楽性は少し違いますが、私の大好きなリッチー・サンボラの2ndと同じ“臭い”を感じます。まぁ偉そうに語れるほど私はパブロックにもブルーアイドソウルにも詳しくないのですが、ルーツロックやアメリカーナというジャンルを超えた普遍的な魅力を持つ音楽なので、一部の愛好家だけのものにしておくにはホントに勿体ない逸材であることだけは確かです(*)。
とにかく、ソウルとかパブロックとかはこの際どうでも良くて、とにかく曲が素晴らしいんです。収録曲のスタイルは非常に多彩で、前述のソウル風の“Singing On The Radio”に軽快なロックンロールの“Harder Tonight”や“What Do You Want”、美しいバラードの“What Else Can I Do”、ピアノだけをバックにムーディーに歌い上げる“Under The Rainbow”、弦楽四重奏をフィーチャーした異色の“Tosca Girls”、思わず一緒に歌っちゃうくらいキャッチーなサビを持つ“Always On Fire”、と音楽的な引き出しの多さを見せつけながらも、不思議と統一感がありますし、どの曲もフックの効いた親しみやすいメロディを備えています。また、どんなスタイルの曲でもシンプルかつコンパクトにまとめられているのも良いです。最近は歳のせいか新しいアルバムを聴いてもなかなか曲を覚えることができないのですが、このアルバムは1回聴いただけでほとんどの曲が頭に入りました。
ウォルターの声はクセのないストレートなロック向きの声で、声質的にはブルース・スプリングスティーンを少し上品にしたって感じでしょうか。歌唱力もかなりのもので、張りのある中音〜高音部が素晴らしいです。この声でソウルフルに歌い上げるボーカルは貫禄十分で、何度聴いても惚れ惚れします。実は上で私がリッチー・サンボラの名前を出したのは、声を張り上げて力強く歌い上げる時の雰囲気が少し似ているからというのもあるんです。この歌声を生で聴けるのかと思うとライブが待ち遠しいです。プロデュースを務めギターも弾いているスクラッピーの貢献度も大きくて、私のお気に入りである“Hands Of The Devil”のギターは最高です。
MySpaceでは3曲ほど試聴できるようになっていますし、日本ツアーはまだ半分以上の日程が残っていますので(
ツアーの日程)、ぜひお近くにお住まいの方はライブに足を運んでみて下さいな。
ちなみに、イタリアのインディレーベルから発売された1stアルバム「Heavy Just The Same」は音質や洗練度という点ではやや劣りますし、今作に比べるとブルーアイドソウルなどからの影響が少し濃いですが、基本的には同じ路線なのでオススメです。この2ndと同様にGoateeで購入できます。
(*)この文章はどこも見ないで思いつくままに書いたのですが、後になってDWHQの紹介文に「決して一部のマニア受けで終わるようなものではなく幅広い層にアピールできるその才能」とほぼ同じ内容の文面があるのを発見。みんな思うことは一緒なんだなぁと思いました。